ハーフトニング(Halftoning)とは

 コンピュータ上のディジタル画像は、通常8ビット(256階調)による連続階調画像で表わされる。しかし、ディジタル画像を印刷するための印刷機は、技術やコストの問題から、数色のインクしか持たないため、この数色のインクのみを用いて擬似的に元のディジタル画像に見える出力画像を生成する技術がハーフトニングと呼ばれる技術である。 新聞の写真などを近づけて見ることで、ハーフトニングが使用されて印刷が行われているのが分かる。

主なハーフトニングの手法

主なハーフトニング手法である、組織的ディザ法(Ordered Dither)、誤差拡散法(Error Diffusion)、Direct Binary Search法を示す。

組織的ディザ法(Ordered Dither)

組織的ディザ法は、画像全体で同じしきい値処理をせずに、ピクセルごとに異なるしきい値を用いて二値化する手法である。ディザ行列と呼ばれるしきい値を格納した行列を入力画像に敷き詰め、それぞれのピクセルごとにディザ行列のしきい値と比較して、各ピクセルの色を白か黒に決定する。各ピクセルの比較のみで出力画像を生成するため、非常に高速な処理が可能となり、比較的安価なプリンタなどで使用されている。

画像の品質は、行列の大きさやディザ行列の持つしきい値のパターンに大きく依存する。規則的に配置されたしきい値を持つディザ行列を用いた出力画像は、規則的なドットの配置を持つ画像となり、印刷された黒ドットが限りなく一様に分布するようにしきい値を配置すれば、アーティファクトのない高品質な画像を生成することができる(Blue-noise Maskと呼ばれる)。しかし、組織的ディザ法では、単純な処理であるため、画像の細部まで表現することは難しく、非常に高品質な画像を生成することは困難となる。

以下の写真は、「Bayer型」と「Blue-noise Mask」の2種類のディザ行列をそれぞれ使用した出力結果である。Bayer型ディザ行列は、しきい値が規則的に配置されているため、出力画像にも規則的なアーティファクトが表れてしまう。Blue-noise Maskを使用した画像は、アーティファクトのない画像を生成している。しかし、どちらの画像でも細部を表現することができていない。

   
 Bayer型ディザマスクによる出力画像(大きな画像を表示)     Blue-noise Maskによる出力画像(大きな画像を表示

誤差拡散法(Error Diffusion)

誤差拡散法は、しきい値処理によって発生する入力画像と出力画像の誤差を周りのピクセルに拡散させることで、入出力画像間の平均輝度値を等しく保つような手法である。通常、画像をラスタ操作順に操作していき、しきい値処理で発生した誤差を周りのピクセルに拡散させる。周りのピクセルへの誤差を拡散する割合を変化させることで、画像の品質が変化する。

組織的ディザ法と異なり、周りのピクセルを考慮した処理であるため、組織的ディザ法よりも計算時間を必要とする。また、ラスタ操作順に誤差を拡散させることによる “worm” と呼ばれるアーティファクトも発生してしまう。しかし、単純なしきい値処理である組織的ディザ法よりも画像品質は高く、アーティファクトへの様々な提案がされており、誤差拡散法は組織的ディザ法と並び、最もポピュラーなハーフトニングアルゴリズムとなっている。

以下の写真は、「Floyd & Steinberg型」と、「Jarvis, Judice & Ninke型」という、有名な2つの誤差拡散カーネル(拡散の割合)による出力画像である。Floyd & Steinberg型の方が拡散係数の数が少なく高速なのに対し、Jarvis, Judice & Ninke型は広範囲に拡散し、高品質かつアーティファクトの影響を受けにくいものとなる。

   
Floyd & Steinberg 型による出力画像(大きな画像を表示)  Jarvis, Judice & Ninke型による出力画像(大きな画像を表示

Direct Binary Search法

Direct Binary Search(DBS)法は、入力画像と出力画像の誤差を最小にするような手法である。出力画像のピクセルを反転したり、近傍ピクセルと交換することで入出力画像間の誤差を減少させていき、誤差が減少しなくなるまで、この操作を繰り返すというアルゴリズムとなる。

連続階調画像である入力画像と、二値画像である出力画像を単純に比較することはできないため、出力画像が人間の目に「どのように見えているか」ということを考え、出力画像にローパスフィルタ(一般的には、ガウシアンフィルタ)をかけ、生成された画像と入力画像の誤差が最小となるように操作を繰り返す。繰り返し演算に基づくアルゴリズムであるため、上記に述べた手法と比べ、非常に計算時間を要するという欠点がある。しかし、DBS法はハーフトニングの手法の中でも、最も品質の高い画像を生成する手法の一つとなっています。

以下の写真は、DBS法を用いた出力画像である。上記に述べたどの手法と比較しても、DBS法が高品質なのが分かる。

   
   DBS法による出力画像(1) (大きな画像を表示)          DBS法による出力画像(2) (大きな画像を表示

 
halftoning.txt · 最終更新: 2010/01/26 16:16 by cs
 
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